知らないと損する!店長の給与の決め方と組織設計の鉄則

飲食店経営において、オーナーが現場を離れ、人を雇って店舗を任せるフェーズは、事業拡大の生命線です。その際、多くの経営者が直面するのが「店長の給与をどう決めるか」という問題です。
一般的な相場観だけで適当に決めてしまうと、組織全体に歪みが生じ、結果として利益を圧迫したり、優秀な人材の離脱を招いたりします。本記事では、店長の給与を決める際の一般的な考え方と、事業をスケールさせるために必須となる理想的な組織設計と給与体系の作り方を解説します。
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多くの店舗が陥る給与決定の落とし穴

多くの飲食店オーナーが、初めて店長を雇う際に、給与決定の明確な基準を持たず、結果として事業構造に合わない適当な金額を設定してしまうケースが散見されます。
一般的な給与決定の曖昧さと相場観
生業として1店舗を経営しているオーナーが2店舗目を作る時に、初めて店長を雇うケースが一般的です。その際、よく給与を決める根拠となるのが「他の会社はこれくらいだから」という「曖昧な基準」です。
- 理由の欠如: 「なぜその金額になったのか」の理由がなく、ボーナスの有無や福利厚生の計算もできずに、適当に決めているパターンが多く見られます。
- 属人的な決定: 店長になってもらう人が友人や知人である場合、「前職の給料を加味して」決定することがあります。これは、その人の能力や、店舗の予算達成への貢献度とは関係なく、「やってくれればありがたい」という状況から生まれる属人的な決定です。
このように適当に給与を決めてしまうと、組織全体で見たときに、給与水準に合理性がなくなり、不満や不公平感の原因となります。
飲食店の店長の給与相場とボーナスの実態
現状、飲食店の店長の月給相場は、人件費が上がっているとはいえ、求人票に記載されている金額は実態よりもやや高めに設定されていることが多いのが現実です。
求人関係の知見によると、店長の給与レンジは30万円から40万円の間が基本である企業がほとんどです。もちろん、これより高いところも低いところもありますが、大体の企業がこのレンジに収まっています。
また、ボーナスについては、7割ぐらいの店舗で無いと考えられます。ボーナスを月に割り振って給与を高く見せている会社も多く存在します。これは、求人の際に給料を高く見せやすくし、採用しやすくするためです。そもそも飲食店で働くスタッフがボーナスをもらえないという前提で来ていることが多いため、各月に振り分けた方が、求人上は給与の見せ方として有利になる、という判断がされています。
組織の成長を見据えた理想的な給与設計

店長の給与を決める理想的な方法は、組織構造から逆算し、役職ごとの給与水準を明確に設計することです。
組織構造からの逆算と専門家の活用
事業を拡大し組織を作っていくためには、どの役職がいくらという明確なレンジが必要です。給与設計の出発点は、組織が形作られることです。トップがいて、次の役職、その次の役職というピラミッド構造を明確にします。
この設計は、求人できることを前提に進める必要があります。求人から逆算して、店長の給与や福利厚生をつけていくのが合理的です。
- 給与設計のプロセス: 外部委託も視野に入れ、給与設計と役職ごとの水準を策定します。
- 予算との相関関係: その上で、「この給与水準が払えるビジネスの予算はどれくらいなのか」を逆算して事業計画を作ります。給与は経費であり、売上から支払われるため、売上が低ければ高い給与を求人しても成り立ちません。
給与水準は、ある程度の売上が見込める、または予算を達成するという前提でなければ成り立ちません。したがって、給与の決定は、予算作成と密接な相関関係にあり、利益が計算できないと事業計画も立てられず、借り入れもできないという問題につながります。給与設定は、計算しやすい値段帯にすることが求められます。
給与水準の目安と労働時間の設計
店長の給与が売上高の何%であるべきかは、ビジネスモデル次第です。例えば、店長以外に社員が3~4人必要なモデルでは固定費が重くなるため、高い売上高や良好な利益率がなければ人件費を巻き取れません。単価が低く売上が取れないラーメン屋などで社員を雇いすぎると、コントロール不能な固定費となりがちです。
店長の給料を高くするならば、その他のスタッフは全員アルバイトで回すなど、構造的な調整が必要です。店長一人が高い給与でも、その店長がピラミッドの底辺であるアルバイト層全てをコントロールできれば問題ありません。
店長一人の給与の目安としては、個人的な感覚値として以下を推奨します。
- 下限: 35万円
- 中央値: 37万円
- 上限: 40万円
これはすべてボーナス込みを前提とします。ボーナスは業績連動とし、業績が低い月は低くても良いですが、業績が良い月は1ヶ月分程度でも良いでしょう。この構造であれば、上限の40万円に加えてボーナス(例えば2ヶ月分)を合わせ、最大で年収560万円を支払っても成り立ち得る店舗構造になります。
また、給与と合わせて労働時間も固定することが重要です。例えば、「200時間働いてね」と決めたら、その時間は絶対にお店に出てもらいます。あるいは現場を180時間、残りの10時間(など)をその他の時間とし、そこは本人の裁量を持たせないで管理します。
マネージャー層に必須な「頭脳労働」へのシフトと現場との距離感

店長やマネージャー層の給与設計で最もポイントとなるのが、彼らの役割と労働時間の質です。
「楽になる」という勘違いと頭脳労働の重要性
アルバイトや一般社員は「上に行けば楽になるだろう」と思っている人が多いですが、実際はそうではありません。マネージャーや管理職は、現場の作業よりも頭脳労働の比重が圧倒的に高く、精神的な負荷はむしろ重くなります。マネージャーが少ないのは、それが難しいからです。
管理職になると、どれだけ頭脳労働(戦略策定、数値管理、教育など)ができるかが非常に重要になります。しかし、いきなり頭脳労働ができるわけではないため、最初は現場に力を入れながら、少しずつ頭脳労働に移していくプロセスが必要です。
現場との対立を避けるマネジメント姿勢
マネージャーが急に現場に来なくなり、文句ばかり言うようになると、下からの見られ方が非常に悪くなります。今まで一緒に改善に取り組んできたのに、急に「やる側」と「やらされる側」の対立関係になってしまい、組織がうまくいかなくなります。
これを避けるためには、できるだけ現場にいながら一緒に改善しようというスタンスを崩さないことが重要です。店舗が増えるごとに、現場の負担は軽くしていくものの、結果として労働時間は一緒(ただし、1店舗ごとの現場で働く時間は減っている)という状態が、現場のスタッフが納得しやすく、組織が安定するポイントです。
上の層が実質労働をしない層が増えてくると、現場から離れすぎてしまい、現場の状況が悪くなっても、「下のスタッフのせい」にしてしまいがちです。これが組織の歪みとなり、特に多店舗展開において、余ったお金(微細な人件費の無駄など)が募ると、無視できないほどの大きな額となってしまいます。
まとめ:飲食店の店長給与を決定するための鉄則
飲食店の店長の給与を決定し、事業をスケールさせるためには、感情論ではなく、明確な組織設計と予算への組み込みが必要です。
- 相場観の理解と脱却: 一般的な月給相場は30万~40万円だが、これに頼らず、組織構造から逆算して給与水準を設計が重要です。また、ボーナスは月に割り振ることで、求人の際の給与の見せ方を良くする工夫も有効です。
- 給与と予算の相関関係: 経営が成り立つための売上予算を先に作り、その予算が達成できる前提で給与を設定することが重要です。給与は経費であるため、単価や業態の利益率を考慮した上で、高すぎない水準にするべきです。
- 労働時間の固定と役割の明確化: 店長には労働時間を固定し、徐々に現場労働から頭脳労働(マネジメント)へシフトさせましょう。上に行けば楽になるという誤解を解消し、現場に寄り添いながら管理を行うスタンスが、組織の安定と成長には不可欠です。





