飲食店にクレームはつきもの!最悪の状況を「チャンス」に変える神対応とは?

「飲食店は3年で7割が廃業する」と言われる厳しい現実の中で、お客様からのクレームは経営者にとって最も避けたい事態の一つです。しかし、クレームを単なるトラブルで終わらせず、その後のリピートと信頼につなげることで、ピンチを成長のチャンスに変えることができます。
全店舗黒字経営を続けるプロの視点から、クレームを「失注リスク」ではなく「顧客と向き合えるミッション」と捉え、再来店に繋げる具体的な対応ステップと、スタッフの意識改革について徹底解説します。赤字を脱却し、長く愛される店を作るためには、クレーム対応の意識改革が不可欠です。
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成功を左右する最重要課題:「クレーム対応」の意識改革
多くの経営者が、商品やサービスに情熱を注ぐ一方で、クレーム対応を「早く終わらせたい作業」と捉えがちです。しかし、クレームこそがお客様と深く向き合える唯一の時間であり、対応次第でファンを増やす絶好の機会となります。
経営者の鉄則:「失注リスク」を避ける

僕らがやっているのは商売であり、よっぽどの悪質な客ではない限り、「絶対また来てもらう」ことが最大の目標であり、前提となります。
クレーム対応で最も避けるべきは、お客様を失うこと(失注リスク)です。代金を多少損する可能性があったとしても、その場で嫌な気持ちにさせて帰してしまうことで、お客様を永遠に失うことの方が、はるかに大きな損失となります。
オーナーの中には「やりすぎだ」と言う人もいますが、「やりすぎても別に損はしない」というマインドが重要です。目先の代金を失うことよりも、お客様を失うことのほうが、1番のリスクであることを忘れてはいけません。
クレーム対応は、「次どうしたらまた来てもらえるか」というミッションだと捉え、再来店してもらうための行動に全力を尽くす必要があります。この意識こそが、お客様に愛され、長く続けられる飲食店になるための土台です。
クレームを「チャンス」に変える具体的な3ステップ
当店で実際に行っている、お客様を再来店に繋げるためのクレーム対応の具体的なステップをご紹介します。これは、アレルギー系からパワー系のクレームまで、全ての事態に対応するためのシステムです。
1. 徹底的な「対価による表現」

クレーム対応で重要になるのが、謝罪を「対価」で表現することです。
お客様が不満を訴えている状況で、ただ「申し訳ございませんでした」と謝るだけでは、ほとんど意味がありません。待たされたり、不快な思いをさせたりしたことに対して、具体的な「対価(サービス)」で誠意を示すと良いです。この「対価による表現」が、精神誠意を具現化し、お客様に「ありがとうね」というポジティブな感情で帰っていただくための肝となります。
- 基本サービスの徹底:問題が発生した商品の代金はいただかない(お代を免除)。オーダーから15分以上経ってからの商品提供遅延など、件数の多いクレームの場合はこの対応がベター。
- 追加サービスによる心象改善:代金をいただかないという対応に加え、「よかったらコーヒー召し上がってください」「デザートもサービスさせてください」といった無料の飲食物の提供を実施。謝られた上でサービスを受け取ることで、お客様の感情は「怒り」から「感謝」へと変わりやすくなります。
- 高額なケースへの迅速な対応:衣類への汚れや、重度のアレルギー反応など、お客様に実害が出たケースでは、迷わず代償を支払います。洋服が汚れた場合はクリーニング代のお支払い、アレルギーなど健康被害の恐れがある場合はすぐに救急車を手配するなどの迅速な緊急対応が必要です。
2. 負けないための「段階的謝罪システム」

クレーム対応は、役職が低い者から段階的に対応する仕組みを構築しておくことが、解決率を上げる鉄則です。このシステムは、「誰が出ても最終的に解決できる」という負けない戦い方を実現するためのものです。
いきなりオーナーや社長といったトップが出ていっても、その後に対応する人がいなくなり、お客様の問題解決の余地がなくなってしまいます。
- 店舗責任者(社員またはアルバイト):まず対応し、可能な範囲で対価(デザートやドリンクなど)を提供し、謝罪を行う。
- マネージャー:店舗責任者で解決できない場合に、次の権限を持つマネージャーが対応する。
- 部長:マネージャーでも対応が難しい場合に、さらに上の権限者が対応する。
- オーナー(社長):最後の砦として対応。
この段階を踏むことで、「次、もっと偉い人が出てきた」という形で、お客様の納得感を高めながら、どこかの段階で必ず問題を解決に導くことができます。役職が低いところから、しっかりと謝りに行く姿勢も重要です。ただし、アレルギー対応などの緊急事態の場合は、この段階を飛ばしてすぐに病院に行くなど、迅速な対応を最優先します。
3. 「マニュアルの視認性」と「再来店の設計」

アルバイトスタッフでも冷静に対応できるよう、クレーム対応の重要なルールは必ず目に見える場所に貼り出し、明確化しておくことが必要です。普段目に触れない場所にあるルールは、緊急時に忘れ去られてしまいます。重要なルールは、誰もがすぐにパッと見て対応できるよう、目に見えるところに貼っておくことが、オペレーションの確実性を高めます。
また、対応の最後には必ず再来店に繋がる設計を組み込みます。クレームを「お客様との接点」で終わらせず、「次へ繋げる」ことが重要です。
- 名刺の活用:責任者が名刺を持って挨拶に伺い、「この名刺を持ってきていただけたら、後日サービスさせていただきます」と伝え、再来店を促す。名刺は、お客様へのリベンジの約束でもあります。
- 名前を覚える:お客様の名前を伺い、覚えておくことで、次回来店時に「○○様、いつもありがとうございます」と声をかけ、特別感と喜びを演出します。そこまでして「また来てもらう」ことを目標とすることが、クレームをチャンスに変える最終的なゴールとなります。
赤字脱却への道:早期発見と精神誠意の精神
クレーム対応の意識を改革することは、お店のQSC(品質・サービス・清潔さ)の向上にも繋がります。
早期発見の重要性
お客様に言われるクレームだけでなく、「自分から拾いにいく」姿勢、すなわち「クレームを早期発見する力」が重要です。
「料理が遅れている」とこちら側で気づいているのに対応しない場合、それはセルフクレームと同じです。「お客様の様子がおかしい」「料理を食べているが、首をかしげている」など、提供側で気づけるクレームの種をいち早く見つけ出すことで、本格的なトラブルになる前に対応することができます。お客様が料理を食べている最中に「お味大丈夫ですか?」と声をかけるなどの早期発見が、大きなトラブルを避ける鍵となります。
オーナーは日報などを通じて、わずかなクレームの記述も見逃さず、「お客様を大切にする」という姿勢をスタッフに徹底して示し続ける必要があります。
精神誠意を「対価」で表現し、長く続ける
クレーム対応で大切なのは、精神誠意を尽くすこと、そしてそれを「対価」という形で表現することです。安易に「また来てもらう」という目標を諦めず、その場の損得勘定ではなく、お客様を失うリスクを避けるという最大の目標に向かって、冷静に対応しましょう。




