人手不足と人件費高騰を乗り越える!正社員を減らして利益を残すための飲食組織論

飲食業界を席巻している大きな悩みの1つとして、採用難と人件費の高騰があると思います。求人を出しても反応がなく、最低賃金の上昇と社会保険料の負担増が経営を圧迫しています。
もしあなたが、昔ながらのやり方で正社員を揃え、彼らに責任を負わせることで店を回そうとしているなら、その経営は非常に危険です。
今回は、私が10年以上の経営で行き着いた、人手不足の時代を勝ち抜くための新・組織戦略について解説します。なぜ今、あえて正社員を減らすべきなのか、そしてアルバイトだけで店を回す仕組みが最強の利益を生む理由を、具体的な数字とともにお伝えします。
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採用難と人件費高騰に勝つための構造改革

まず私たちが直面している現実を冷静に分析しましょう。飲食業界の採用が楽だった時期など、これまで一度もありませんでした。しかし、かつては今よりも労働人口が多く、憧れのカフェや有名店には高い倍率を突破しなければ入れないという時代もありました。
それがこの10年、15年で状況は一変しました。IT化が進み、現場労働が敬遠される空気が強まり、さらには最低賃金が上がり続けています。
私が最初に店舗を立ち上げた10年以上前、アルバイトの時給は1000円出せば高い方でした。それが今や1200円、1300円は当たり前で、都市部では1500円という数字も見え始めています。
さらに経営を圧迫しているのが社会保険料の負担です。会社と従業員合わせて約30パーセントという重いコストがかかる日本の構造において、人を雇用し続けるコストはかつてないほど膨れ上がっています。
この状況下で、サービスを良くして商品を磨けばなんとかなるという精神論だけで乗り切るのは不可能です。構造そのものを変えなければ、売上が上がっても利益が全く残らないという状況から抜け出すことはできません。多くの経営者は、お店を安定させるために、まずは優秀な正社員を確保しようとしますが、これからの時代、正社員に依存しすぎることは経営にとって大きなリスクとなります。
正社員は一度雇用すれば、暇な時期であっても一定の給与と社会保険料が発生する固定費です。売上が落ち込んだ時に人件費を調整できないことは、店舗経営において致命的な赤字要因となります。
さらに、雇用形態が生み出す心の壁も無視できません。アルバイトから正社員になった途端、社員だからこうあるべきだという謎の責任感に押し潰され、結果としてパフォーマンスが下がるスタッフが少なくありません。
逆に、アルバイト側も、自分はアルバイトだから責任は取らなくていいという逃げ道を作ってしまいます。雇用形態が違うだけで、人間としての能力が急に変わるわけではありませんが、社員という肩書きが現場において柔軟性を欠く原因になっているのです。
正社員を減らしアルバイトのポテンシャルを活かす仕組み

私の運営する会社では、今、戦略的に正社員の数を減らす動きをしています。売上規模から考えれば、通常なら60人から70人の社員が必要とされる規模ですが、実際にはその半分以下、30人程度で運営しています。
そして、現場の運営において、正社員とアルバイトのやるべきことに境界線を作っていません。店舗運営に必要なスキル、例えばレジ締め、営業報告、棚卸し、発注、さらにはシフト作成まで、これら全てをアルバイトスタッフが担当しています。店長という肩書きを持つ人間が不在の店舗も、全体の半分ほどあります。
なぜこれが可能なのかといえば、店長がいなければできない仕事など、実際には存在しないからです。店長という概念そのものが古くなってきているのです。
多くのオーナーが陥っている間違いは、アルバイトよりも正社員の方がレベルが高いと思い込んでいることです。
しかし現実はどうでしょうか。例えば、非常に優秀で学習意欲の高い大学生アルバイトと、なんとなく飲食業界に来た正社員では、どちらが短期間で仕事を覚え、効率的に作業をこなすかは明白です。今の学生やフリーターには非常に優秀な人材が揃っています。彼らにチャンスを与えず、社員にしか情報を開示しない運営をしているから、アルバイトが育たないのです。
私たちの会社では、戦力分析表というツールを使い、個人の能力を数値化して管理しています。そこには雇用形態による差別はありません。アルバイトであっても能力が高ければ評価され、重要な仕事を任されます。
情報をオープンにし、教育の仕組みを整えれば、アルバイトだけで店舗を完璧に回すことは十分に可能なのです。この仕組みを構築できれば、正社員という固定費を変動費化していくことができ、不透明なこれからの時代において最強の武器となります。
労働分配率25%を実現する攻めの経営戦略

正社員を減らし、現場をアルバイト中心の自律型組織に切り替えることで、人件費率は劇的に改善します。
一般的に飲食店の適正な人件費率は30%程度と言われますが、私の基準はさらに厳しく、25%をデッドラインとしています。実際、店舗の数字だけでなく、本部の経理やマネジメント、さらには私の役員報酬を含めた全社的な人件費率であっても、25%前後に収まっています。
これは、現場のオペレーションから無駄な社員の拘束時間を省き、必要な時に必要な戦力を配置できる体制を作ることで実現できます。社員を現場の作業員として使うのではなく、仕組みを作るプロフェッショナルとして機能させているのです。現場は優秀なアルバイトチームに任せ、オーナーや社員は次の出店戦略やマーケティング、そして教育の仕組みづくりに時間を割く。
この健全な役割分担こそが、組織運営を成功させる鍵となります。
もしあなたが、今いる正社員を減らしてアルバイト主体の運営に変えようと思ったら、相当な勇気が必要でしょう。おそらく現場からは、社員がいなければ無理だ、アルバイトだけでは責任が持てないといった反発が起こるはずです。
しかし、これは一度飛び降りてしまえば実はなんてことはない、楽な世界が待っているバンジージャンプのようなものです。まずは社員だけが握っている情報を開放し、アルバイトを信頼して権限を譲渡していくことから始めてください。
2025年以降、日本の労働人口が急激に増えることは絶対にありません。人手不足は加速し、採用コストは上がり続ける一方です。今なんとか回っているお店でも、今の仕組みのままでは数年以内に必ず限界が来ます。
昔ながらのモデルは崩壊し、選ばれるのはアルバイトであっても成長でき、裁量を持って働けるお店です。固定概念を捨て、新しい時代の組織論を取り入れた人だけが、利益を出し続ける強い店舗を作ることができます。
まとめ:常識を捨てて負けない組織を構築する

今回お伝えした内容は、これまでの飲食業界の常識からすれば、非常に過激に聞こえるかもしれません。しかし、これからの時代を生き残るためには、こうした構造的な変革が不可欠です。
正社員に過度な負担を強いるのではなく、優秀なアルバイトの力を借り、彼らが主役となって働ける環境を整える。それが結果として、離職率を下げ、人件費率を適正化し、安定した利益を生むことにつながります。
人手不足を嘆く前に、自分のお店の組織図を一度疑ってみてください。その仕事は本当に社員でなければできないことなのか、アルバイトに教える努力を怠っていないか。情報の非対称性をなくし、透明性の高い経営を行うことで、スタッフ一人ひとりの当事者意識は必ず向上します。
飲食経営は、これからさらに厳しい時代へと突入します。しかし、仕組みを整え、戦略的に人を配置することができれば、どんな波風が吹いても揺るがない強い組織を作ることができます。勇気を持って一歩を踏み出し、次世代の飲食経営へとシフトしていきましょう。あなたの挑戦が、盤石な経営基盤を築くきっかけとなることを願っています。




