「優秀な人が来ない」と嘆く前に。飲食店経営を加速させる「採用」と「育成」の真実

「いい人が採用できなくて、2店舗目が出せない……」 「今のスタッフでは店を任せるのは不安だ……」
飲食店を経営しているオーナーさんから、こうした悩みを本当によく聞きます。あなたのお店はどうでしょうか?
確かに、人手不足と言われる今の時代、飲食業界で「優秀な経験者」を採用するのは至難の業です。しかし、実は多くのオーナーさんが「採用」というものの本質を見誤っている可能性があります。
今回は、私が創業初期にどのような人材と出会い、どうやって組織を大きくしてきたのか。そのリアルな舞台裏をお話ししながら、今のあなたのお店を劇的に変える「採用と育成の仕組み」について解説していきます。
▽記事の内容を動画で視聴したい方はコチラ
本記事のリンクには広告を含んでいます。
私の創業メンバーは「1番仕事ができないやつら」だった

今でこそ、私の会社は多くの店舗を展開して、スタッフたちもバリバリと活躍してくれていますが、始まりは全く逆でした。
「黒瀬さんは、最初はどんな優秀な人を引き抜いてスタートしたんですか?」と聞かれることがありますが、事実はその正反対です。私が独立する際に一緒に始めた3人は、前の職場で「1番仕事ができない」と言われていたメンバーでした。
当時の店長に毎日激詰めされ、自信を失い、半分いじめのような状態になっていた子たち。「お前は本当に才能がないな」と言われていたような子に、「うちに来ないか?」と声をかけてスタートしたのが私のチームの始まりでした。
なぜ、そんな「できない子」たちを誘ったのか。 それは、飲食経営で勝ち抜くための明確な戦略があったからです。
優秀な人は、そもそも「個人店」には来ないという現実

多くのオーナーさんは「仕事ができる人」「即戦力の人」を求めて求人を出します。
しかし、客観的に考えてみてください。キャリアマップをしっかりと描けているような、世間一般で言う「優秀な人材」が、わざわざリスクのある個人店や創業間もない1店舗目の店を選ぶでしょうか?
答えは、残念ながら「NO」です。 そうした優秀な層は、福利厚生が整い、キャリアパスが明確な大手企業や有名店に流れていきます。
つまり、「優秀な人が来ない」のは当たり前の前提なんです。
私は最初から「優秀な人は来ないよね」という前提で全てを始めました。 能力が低いと言われていた彼らでも、迷いなく働けて、しっかりと利益を出せる「仕組み」さえあれば、店は回る。そして、その仕組みの中で働くことで、彼らはやがて「本物の優秀な人材」へと成長していくのです。
「成長」を待つな。出店ハードルを下げる「仕組み」の作り方

2店舗目、3店舗目と展開できないオーナーさんの多くは、「スタッフが育ったら出店しよう」と考えます。
しかし、人間はそう簡単に、劇的には成長しません。
性格を明日から変えろと言われても無理なように、個人の資質に頼った経営は再現性がありません。だからこそ、「仕事ができない前提」でオペレーションを組むことが何より重要になります。
具体的に私が実践してきた「仕組み」の一部をご紹介します。
徹底した「定位置管理」と「見える化」
売れているお店でもよくあるのが、新人が入った時に「醤油どこですか?」「この調味料の名前なんですか?」といちいち探したり聞いたりする作業です。これ、実はものすごい「教育コスト」の無駄になります。
その教育コストの無駄を省くために、「定位置管理」と「見える化」を徹底しました。
- テプラで全ての物の置き場所を決める
- 定数を決めて、誰が見ても「補充が必要か」わかるようにする
- 冷蔵庫の中身も外から見てどこに何があるか貼っておく
「書いておけばいいじゃん」というレベルのことを徹底するだけで、探す時間や暗記する労力がゼロになります。私の店に来た他社のスタッフは、あまりの貼り紙の多さに驚きますが、これが「教育コスト」を最小限にする鍵です。
「ラミネートされていないルール」は存在しない
次は、「ルールを見える形で伝える」ことです。
口頭で伝えただけのルールは、いつか必ず風化します。 「うちの共通言語は、ラミネートして掲示してあることだけ。貼ってないルールは守らなくていい」とまで言い切っています。
最初は仕事が不慣れな子でも、目の前にマニュアルやチェックリストが常に掲示されていれば、ミスは劇的に減ります。時間が経てば、それは「慣れ」へと変わり、自然と体が動くようになります。
成長の正体は「能力」ではなく「慣れ」である

「社員だからこれくらいできるだろう」という過度な期待は、オーナーとスタッフの間に深い溝を作ります。
そもそも、なぜ社員はアルバイトよりも仕事ができるのか。 それは能力が高いからではなく、単に「労働時間が長くて、仕事に慣れているから」に過ぎません。
だとしたら、経営者の役割は「早く慣れさせる環境」を作ること。 先ほどの「見える化」や「ルール化」を徹底すれば、未経験者でも最短で戦力化できます。
私の会社では、同じ規模の他社に比べて、実は社員数が約3分の1ほどしかいません。 直営・FC含めて約40店舗ありますが、本部の社員数は30名程度です。
なぜこれが可能なのか。 それは、徹底的な仕組み化によって、一人ひとりの生産性が極限まで高まっているからです。その分、浮いた人件費をスタッフの給料やボーナスに還元できる。そうすると、スタッフの満足度が上がり、さらに主体的に動くようになるという正のループが生まれるのです。
「採用」とは「生む」ことである

あらためてお伝えします。 採用は、外から優秀な人を連れてくることではありません。 仕組みによって「優秀な人を生み出す」ことこそが、真の採用戦略です。
「寿司屋」と「焼き鳥屋」では、同じ飲食業でもルールが全く違います。 サッカー選手がいきなりラグビーの試合に出て活躍できないのと同じで、どんなに前職で実績がある人でも、あなたのお店の「色」や「やり方」に馴染むまでは戦力になりません。
だからこそ、以下のマインドセットを持ってください。
- 採用のハードルを下げる: 「誰でも戦力になれる仕組み」を作ることで、採用の間口を広げる。
- 特定の能力に依存しない: 「あの人がいないと店が回らない」という状態を排除する。
- 市場価値を高める教育: 売上管理、FL管理、集客など、どこの業界でも通用するスキルを仕組みの中で学ばせる。
さいごに:飲食業界に「いい人」を増やしたい

私がここまで仕組み化にこだわるのは、単に自社を大きくしたいからだけではありません。
飲食業界で働く人たちが、ただ作業をこなすだけでなく、経営の視点(数値管理や広告、求人など)を学び、自分の市場価値を上げてほしいと願っているからです。
もしスタッフが「もっと条件の良い店に行きたい」と言い出したとき、快く送り出せる。あるいは、それ以上に魅力的な条件を自社で提示できる。そんな健全な業界にしていきたいと思っています。
「自分にはまだ右腕となる人がいないから……」と立ち止まっているオーナーさん。 まずは、「醤油の置き場所にテプラを貼る」ことから始めてみてください。その小さな仕組みの積み重ねが、やがてあなたを「現場」から解放し、理想の多店舗展開へと導いてくれるはずです。
あなたのお店が、スタッフと共に成長し、絶対に負けない経営を実現できることを心から応援しています!





