企業の買収や合併を意味するM&A。
飲食店業界でも頻繁に行われていることをご存知でしょうか。
今回の記事では飲食店業界におけるM&Aの現状、買収・売却側双方のメリット、さらにはリスクや相場まで詳しく解説していきます。
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飲食店のM&Aは増加している
一般財団法人日本フードサービス協会が公表する資料によると、飲食店の推計市場規模は2019年時点で14兆5,776億円でした。
しかし、それからコロナの影響があってか2020年から2021年にかけて10兆9,780億円、10兆4,018円と減少傾向にあります。
これらのデータが表すように、コロナが流行って以来多くの飲食店の売り上げが大幅に減少し、多くの飲食店が倒産や廃業に追い込まれています。
そうした中で、事業継続が困難であると見て売却を視野に入れる飲食店も多くあるため、結果としてM&Aの相談件数は増加しているのです。
飲食店を買収する4つのメリット
飲食店を買収するのには以下のようなメリットがあります。
- 優秀な人材、ブランド、ノウハウなどを得られる
- スムーズに事業拡大できる
- 営業権を取得できる
- 人気物件を獲得できる
やはり既存店の物件からノウハウまで全て引き継ぐことができる点がかなりのメリットとなります。
以下で各項目について詳しく解説していきます。
優秀な人材、ブランド、ノウハウなどを得られる
飲食店を買収するメリットの1つ目は、既存店舗の人材、ブランド、ノウハウをそのまま引き継ぐことができる点です。
通常飲食店を始めるとなった場合、人材確保から教育、内装、メニュー開発など飲食店を運営していく上で重要になる部分を1から作り上げる必要があります。
これらをそのまま引き継ぐことができるのは大きなメリットでしょう。
さらには既存店がその地域やインターネット上で築き上げてきた評価や信頼がそのまま残っていて集客に困らないのもかなりのメリットです。
というのも評価や信頼はすぐに築けるものではなく、年月をかけて築いていく必要があるためです。
このように既存飲食店を全面的に引き継ぐことができるのは飲食店買収の大きなメリットであると言えます。
スムーズに事業拡大できる
飲食店を買収するメリットの2つ目は、スムーズに事業拡大できる点です。
通常事業拡大をする際には、立地を決めたり、人材を新たに雇ったりする必要があるため非常に時間がかかります。
しかし、既存店を買収してしまえば店舗、人材、ノウハウを全て引き継ぐことができるため、スムーズに事業拡大ができます。
さらには既存事業と異なるジャンルの飲食店を買収したりすることで、事業の幅を広げることも可能になるのです。
営業権を取得できる
飲食店を買収するメリットの3つ目は、営業権を取得できる点です。
通常、飲食店を経営するには最低でも食品衛生責任者、防火管理者の資格を取得した上で所轄の機関で申請をし、営業権を得る必要があります。
この営業権を得るための一連の作業にはかなり手間がかかります。
しかし、飲食店を買収した場合には営業権をそのまま引き継ぐことができるため営業権を申請するための手間を省くことができるのです。
以下の記事で営業権取得の流れについて詳しく解説しています。
飲食店に必要な営業許可!取得するまでの5つのポイントを解説します!人気物件を獲得できる
飲食店を買収するメリットの4つ目は、人気物件を取得できる点です。
飲食店業界においては、同じ店でも立地が変わるだけで売り上げが大きく変わることがあるほど、立地はとても重要な要素です。
好立地の物件は既存店舗が独占しているため、好立地を狙って出店しようとすると物件探しに苦戦することが多いです。
しかし、既存店を買収してしまえばそのよい立地の物件ごと引き継ぐことができ、ある程度の売り上げが保証された状態でスタートをきることができます。
好立地の物件を取得できるのも飲食店買収の大きなメリットでしょう。
飲食店を売却する4つのメリット
M&Aにおいて買収する側のメリットは前章で述べた通りですが、売却側にも次のようなメリットがあります。
- 撤退コストが不要になる
- 譲渡益が得られる
- 後継者が見つかる
- M&Aで個人保証を解除できる
買収側にも多くのメリットがありますが、売却側にも大きなメリットがあるのです。
以下で詳しく解説していきます。
撤退コストが不要になる
飲食店を売却する1つ目のメリットは撤退コストが不要になる点です。
通常、飲食店を閉める場合には原状回復費と解約予告家賃がかかります。
原状回復費は物件を借りた時の状態に戻すための費用であり、1坪あたり5〜10万円ほどかかると言われています。
また、物件オーナーに解約を宣告してから半年間ほどは家賃を支払い続ける必要があり、それを解約予告家賃と言います。
このように飲食店を閉める際には想像以上にコストがかかります。
しかし飲食店を売却してしまえばこのような費用を払う必要がなくなるため、かなり大きなコストカットとなるでしょう。
譲渡益が得られる
飲食店を売却する2つ目のメリットは譲渡益が得られる点です。
飲食店を売却すれば撤退コストが不要になるのに加え、譲渡益を得ることができます。
譲渡益とは、取得時の株式や不動産の価格と、売却時の価格の差から得られる利益のことです。
譲渡益を得られるのは金銭的にかなり大きなメリットとなるでしょう。
後継者が見つかる
飲食店を売却する3つ目のメリットは後継者が見つかる点です。
少子高齢化に伴い、後継者がおらず閉店を余儀なくされる飲食店が多くあります。
このような場合に、飲食店を他の企業に売却することで飲食店を閉店せずに継承できます。
後継者を見つけるのに、飲食店を売却することはとても有効な手段の一つです。
M&Aで個人保証を解除できる
飲食店を売却する4つ目のメリットはM&Aで個人保証を解除できる点です。
飲食店のオーナーが個人保証をしている場合、万が一店舗が経営不振に陥り、借金を返済できなくなった場合には、オーナー自身が自己の資産を売り払ってでも返済しなければなりません。
このような状況に陥れば、オーナーの個人的な生活や将来に大きな影響を与えることになります。
しかし、飲食店を売却し、買い手に個人保証を引き継いでしまえばオーナーの個人保証を解除できる場合があります。
精神的な不安をなくせるという点で、個人保証を解除できるのは飲食店売却のかなり大きなメリットでしょう。
買収する側の注意点
飲食店を買収する際には下記のようにいくつか注意点があります。
- 希望条件を明確にしてスムーズに取引する
- 慎重にデューデリジェンスを行う
- 属人化された仕組みのリスク判断
それぞれ以下で詳しく解説していきます。
希望条件を明確にしてスムーズに取引する
飲食店を買収する際には、適正価格をあらかじめ把握しておき、さらに希望する条件を事前に決めておきましょう。
事前に決めておくことでスムーズに交渉を進めることができます。
また、希望にあった飲食店を見つけた場合には、他社にとられてしまわないよう、すぐに交渉を開始しましょう。
慎重にデューデリジェンスを行う
デューデリジェンスとはM&Aを行う際に買収側が対象企業の財務や法務の面からのリスク等を把握し、価格や取引について適切な判断をするための調査のことを言います。
デューデリジェンスを慎重に行うことで、対象飲食店が買収にふさわしいかを判断することができます。
飲食店買収の際には対象企業の内情をしっかりと把握し、その後の経営に活かしていけるようにしましょう。
属人化された仕組みのリスク判断
飲食店の中には、オーナーの人柄やオーナーのつくる商品によって人気の出ているお店が多々あります。
このようにお店が仕組み化されておらず、属人的な経営がされている飲食店を買収するのは注意が必要です。
確かに買収することで人材やノウハウは引き継げますが、オーナーの人柄や独創的なメニュー開発を買収後も再現するのは難しいためです。
買収を考えている飲食店が属人的な経営をしている場合にはよく考える必要があるでしょう。
飲食店M&Aの相場
ここまでは飲食店業界のM&Aに関するメリットや注意点について解説してきました。
実際に飲食店業界のM&Aはどれくらいの価格感で行われているのでしょうか。
以下でおおまかな価格の目安や価格の決め方について解説していきます。
飲食店のM&Aは比較的安価
M&Aは数億円規模で行われることが多々ありますが、飲食店に関しては相場100〜250万円で、他業種に比べ非常に安価です。
通常飲食店を始める際には最低でも800万円ほど必要と言われていますが、M&Aをすることでかなり安価で始めることができます。
低コストで飲食店を始めたい際にはM&Aを検討するのもいいかもしれません。
飲食店のM&A価格の目安
飲食店の価格の目安は「時価純資産+実質営業利益の3〜5倍」といわれています。
しかしこれはあくまで目安であり、他にもさまざまな指標があります。
例えば立地やそのお店のブランド力などです。
駅前や大通り沿いなど立地がよければよいほど、そのお店が地域で築いてきたブランド力が高ければ高いほど価格は高くなります。
飲食店の価格は利益に加えて立地やブランド力などさまざまなことが考慮されて決まることを覚えておきましょう。
M&Aは経営戦略として有効な手段
今回は飲食店のM&Aについて、買収・売却側それぞれのメリットや注意点、M&Aの相場などについて解説してきました。
解説した通り、M&Aは買収・売却側にそれぞれ多くのメリットがあり、かなり有効な経営戦略の1つとなります。
状況を適切に見極めながらM&Aを有効活用できるようにしていきましょう!
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