「間借り先を借りたいけど、契約書ってどうやって作ればいいのかな?」
「転貸借契約書と賃貸借契約書ってどう違うの?間借りするときの契約書はどっち?」
「契約書の作成で注意することはある?」
このようなお悩みを抱えていませんか?
間借りで飲食店を開業するには、様々な手続きが必要です。
その中でも重要となってくる手続きは、間借り先の貸主との契約です。
契約時に取り決めを交わすことで、間借りした後の問題を防止することに繋がります。
しかし、間借りで開業する際、一般的な飲食店とは異なる部分もあります。
そのため、貸主とどのような契約を結べばいいのか分からない方も多いのではないでしょうか?
また注意すべきポイントを押さえなければ、トラブルに発展することもあります。
そこでこの記事では、間借り先を借りたい人に向けて契約書の雛形を紹介します。
併せて、注意したいポイントも解説するので、間借りを検討している方はぜひ参考にしてみてください。
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間借りの契約書(転貸借契約書)の雛形
間借り物件を借りる場合には「転貸借(てんたいしゃく)契約書」を作ります。
以下が契約書のテンプレートです。作成時の参考にしてみてください。
※以下のボタンをクリックすると、契約書の雛形が表示されます。
転貸借契約書
貸主〇〇(以下「甲」という。)と、借主〇〇(以下乙という。)との間に、甲の賃借する下記建物につき転貸借契約を次の通り締結する。
第1条(転貸借)
甲の賃借物件である後記物件(以下「本物件」という。)について、乙は、賃貸人の承諾を得たうえで、乙の事務所として使用するため、甲から(その一部を)借り受ける。
記
所在地 〇〇県〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番〇〇号
建物名称 〇〇ビル
契約部分 〇階部分
(うち、乙が使用する部分: ・ 平方メートル)
第2条(使用の目的)
乙は、本物件(の乙が使用する部分)を、〇〇業務用の事務所として使用する。
第3条(契約期間)
貸借の期間は、令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日までとする。
契約更新の際には、1ヶ月前までに書面により通知する。賃貸借契約が更新された場合については、当該賃貸借契約期間と同一の期間を使用期間として更新するものとみなす。
第4条(中途解約)
本契約を解約する場合は、甲乙いずれも契約終了日の1ヶ月前までに、書面により通知する。中途解約の場合の賃料は(月単位or日割り)精算とする。
第5条(賃料)
転借料は、月額〇〇万円とし、甲の指定する方法により支払うものとする。
第6条(契約の解除)
乙が下記の各号に該当する場合には、甲は催告その他なんらの手続きを要しないでただちにこの契約を解除できる。
(一例)
・転借料を2ヶ月以上支払わなかったとき
・銀行取引の停止または仮差押、差押、仮処分、強制執行、解散、破産、会社整理、会社更正等の申立を受けたとき
・反社会勢力の一員、または何らかの関係があったとき
・この契約に定める各事項に違反したとき
第7条(物件の明渡しと原状回復)
期間の満了、解約、解除、その他の事由によってこの契約が終了した場合には、乙は遅滞なくその負担において当該賃貸借物件を原状回復の上、これを甲に明け渡すものとする。
乙は、物件の明け渡しに際し、名目の如何を問わず、これに関連して支出した費用、移転料、立退料、補償費その他営業権一切を甲に対し請求することはできない。
第8条(協議事項)
この契約に定めのない事項及び解釈適用について疑義が生じた場合には、甲乙双方の協議の上、誠意をもって処理するものとする。
第9条(管轄裁判所)
本契約から生ずる権利義務について争いが生じたときは、本物件の所在地を管轄する裁判所を管轄裁判所とする。
上記契約の証として本書2通を作成し、各捺印のうえ、各々1通を保有する。
令和 〇年 〇月 〇日
貸主(甲)
住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番〇〇号
氏名 〇〇 〇〇 印
借主(乙)
住所 〇〇県〇〇市〇〇町〇〇丁目〇〇番〇〇号
氏名 〇〇 〇〇 印
こちらはあくまでも、契約書の一例です。
条件は場合によって異なるため、契約書を作成する際には、間借り先の貸主と相談し記載する内容を決めましょう。
間借りの契約書作成で知っておきたい「転貸借契約」と「賃貸借契約」の違い
間借りの契約書作成時には、以下2つの契約の種類を理解しておきましょう。
- 転貸借契約
- 賃貸借契約
それぞれの項目について、詳しく解説します。
1.転貸借契約
転貸借とは、物件や土地の借主が、借りている物件や土地を第三者に貸すことです。
いわゆる「又貸し」と呼ばれます。
間借りする際には、転貸借契約が適用されます。
店舗が既に借りているスペースを、間借り先として借りることになるためです。
そのため、間借りの契約書には「転貸借契約書」と記載しましょう。
2.賃貸借契約
賃貸借とは、物件や土地の所有者が相手から賃料を支払うことを指します。
賃貸借契約では、又貸しを禁止していることが多いです。
そのため、間借りをする場合、賃貸契約書は作成できません。
間借りの契約書(転貸借契約書)に記載すべき10項目
間借りで契約書を作成する際には、以下の10項目を記載しましょう。
- 建物所有者からの転貸借の承諾
- 転貸借契約の概要
- 使用目的
- 契約期間
- 中途解約
- 賃料
- 契約解除
- 物件の明渡し・原状回復
- 協議事項
- 管轄裁判所
これらの項目が抜けていると、契約した後にトラブルに発展する場合もあります。
問題が起きないためにも、しっかりと確認しておきましょう。
1.建物所有者からの転貸借の承諾
間借り先の契約書で最も重要な項目は、建物の所有者からの転貸借の承諾です。
承諾がなければ、貸主側が契約違反を犯していることになります。
結果、後からトラブルに巻き込まれる可能性が高いです。
そのため、建物所有者から承諾を得ていることを記載しましょう。
併せて、貸主が同意を得ているのか確認しておくことが重要です。
2.転貸借契約の概要
間借りの契約を結ぶ際には、契約の概要を記載しましょう。
具体的には、誰と誰との間で契約を結ぶのか、どの建物を貸し借りするのか、などを決めます。
そのため契約書では、以下を明記しましょう。
- 建物を貸す人、借りる人の名前・住所
- 建物の住所
- 建物名
- 契約部分(階数や部屋番号など)
特に住所や建物名などは、間違えないように注意します。
3.使用目的
契約書には、使用目的を記載します。
建物を何に使うのか、事業用として使えるのかをはっきりさせるためです。
特に、事業用の建物として承諾を取れているかは重要だといえます。
飲食店の間借りで使用する建物は住居用とは異なり、騒音や煙といった問題があるためです。
トラブルを避けるため、契約を作成する前に事業用として使用できるのか確認しておきましょう。
4.契約期間
間借りの契約書には、いつからいつまで間借り店舗として利用できるのか記載しておきます。
特に、契約終了時は記載漏れしやすいので注意が必要です。
「令和〇年〇月〇日から令和〇年〇月〇日まで」と明記しておきます。
加えて、契約を更新する際の手続きや更新後の契約期間についても記載しておきましょう。
5.中途解約
契約期間内に解約する場合について記載しましょう。
例えば「契約終了の〇ヶ月前に書面にて通知する」などです。
どのような手続きが必要なのかを明記します。
また、中途解約する際の当月の賃料についても記載しましょう。
日割りの可否などを明記しておくと、賃料に関するトラブルを避けられます。
6.賃料
間借りの契約書では、賃料について記載しましょう。
金額と支払方法(振り込み、口座振替など)を明記します。
併せて、支払い期限も記載しておきます。
例えば「翌月分を月末までに支払う」などを書面に残しておきましょう。
7.契約解除
間借りの契約書では、契約が解除となる項目を記載しておきましょう。
貸主とのトラブル防止に繋がるためです。
契約解除の項目は、主に以下の事項が挙げられます。
- 転借料を〇ヶ月以上支払わなかったとき
- 反社会勢力の一員、または何らかの関係があったとき
同時に、禁止事項も契約書に記載しておくことをおすすめします。
例えば
- ペットは連れ込まない
- フライヤーは使用しない
などです。
契約解除と禁止事項については、契約書を作成する前に、間借り先の貸主と決めておきましょう。
8.物件の明渡し・原状回復
物件の明け渡し・原状回復は、契約が終了した場合のことを決めておく項目です。
原状回復とは、借りたときの状態に戻すことを指します。
借主は、明渡し義務や原状回復義務を負うように民法第616条(同法第598条の準用)で定められています。
そのため、契約書には「物件の明渡し・原状回復の際には、支出した費用、移転料、立退料、補償費などを、借主は貸主に対して一切請求できない」という旨を記載しましょう。
場合によっては、借人が間借り先に付け加えたものを撤去しない場合の費用を決めておくこともあります。
9.協議事項
協議事項とは、契約書に記載のない問題があった場合の対応を決める項目です。
基本的には「話し合いで定める」という旨を記載するようにしましょう。
10.管轄裁判所
管轄裁判所は、トラブルが解決せず裁判に発展してしまった場合に、どこの裁判所を使うのか決めておく項目です。
例えば「間借り先は東京だけど、裁判は大阪で行う」となると、移動の手間や交通費がかかり面倒なため。
契約書には、間借り先の所在地を管轄する裁判所を設定しておきましょう。
「東京地方裁判所」など、裁判所名を明記しておくのもおすすすめです。
間借りの契約書(転貸借契約書)の作成時の注意点3選
「間借りの契約書を作るのは初めて」という方も多いと思います。
そこでこちらでは、契約書を作成する際の注意点を紹介します。
主に以下3点です。
- 必要事項の漏れがないか確認する
- 主語を記載する
- 第三者から見て分かる内容にする
各項目について、順番に解説します。
1.必要事項の漏れがないか確認する
間借りの契約書を作成するときは、必要事項の漏れがないか確認しましょう。
抜けている項目があると、間借りをした後から貸主とトラブルになる可能性があるため。
間借りの契約書(転貸借契約書)では、以下10項目が必要です。
<間借りの契約書を作成するときに必要な項目>
- 建物所有者からの転貸借の承諾
- 転貸借契約の概要
- 使用目的
- 契約期間
- 中途解約
- 賃料
- 契約解除
- 物件の明渡し・原状回復
- 協議事項
- 管轄裁判所
併せて、日付と署名を記載する欄も作成しましょう。
2.主語を記載する
間借りの契約書を作成する際には、条文に主語を記載するよう意識しましょう。
誰の義務なのかをはっきりさせるためです。
主語を明記しなければ、誰の義務なのかが分からずに、トラブルが起きた際に揉める可能性が高いです。
そのため、契約書では貸主を「甲」、借主を「乙」と記載します。
3.第三者から見て分かる内容にする
契約書は、第三者が見ても理解できる内容にします。
当事者同士でトラブルが解決せず訴訟などに繋がった際には、契約書を基に裁判が行われるためです。
そのため、裁判官にも分かる内容にしなければなりません。
業界用語や当事者同士にしか分からない言葉などは、使用しないよう注意しましょう。