「飲食店の人件費の割合ってどれくらいが目安?」
「飲食店の人件費率を下げる方法が知りたい」
「人件費を管理する指標を知りたい」
本記事では上記の疑問や要望などにお応えします。
飲食店を経営している方の中には、人件費率を抑えたいと考える方もいるかも知れませんが、人件費率の目安や抑える方法がわからないと行動に移せないでしょう。
そこでここから、飲食店の人件費の目安や下げる方法、リスクについて具体的に解説します。
本記事のリンクには広告を含んでいます。
飲食店の人件費とは
飲食店の人件費とは、スタッフの労働に対して支払われる費用のことで、給与や各種手当が含まれます。
人件費の内訳は具体的に下記のとおりです。
- 給料(基本給、残業手当、賞与、通勤手当)
- 福利厚生(社会保険、労災保険、雇用保険、社員旅行など)
- 退職金
給与以外にも社会保険や通勤手当など、スタッフを雇うために必要になる経費すべてが人件費です。
売上に対する人件費の割合を人件費率といいます。
飲食店の人件費率を管理するために重要なFLコスト
飲食店の人件費率を管理するためには、FLコストを把握するのが効果的です。
ここから、FLコストの特徴と目安について具体的に解説します。
特徴
FLコストとは食材費と人件費を合わせた費用のことで、Fは「Food:食品」Lは「Labar:労働」を意味します。
飲食店を経営する場合は、FLコストが重要視される傾向にあり、具体的な理由は下記の通りです。
- 売上に対する食材の原価率や人件費率が分かる
- 経営状況を把握できる
FLコストが適正であれば、利益を残しやすくなり、お店の経営を安定させることに繋がります。
売上高に占めるFLコストの比率はFL比率といわれており、「売上に対してどれだけの食材原価や人件費がかかっているのか」を表します。
FL比率を求める計算式は、「(食材原価+人件費)÷売上×10」です。
FLコストの目安
FLコストの目安として、一般的には60%以下にするのが理想的だとされています。
もし60%を常に超えるような場合、人件費か食材費のどちらか、もしくは両方が高すぎると言え、早急に経営状態を見直す必要があります。
ただし、お店の形態や扱う食材などによってFLコストが変わる点には注意が必要です。
業態によるFLコストの違いは、具体的に下記の表の通りです。
業態 | F(食材費) | L(人件費) |
レストラン | 31〜35% | 25〜36% |
カフェ | 24〜35% | 25〜36% |
ラーメン店 | 30〜35% | 25〜30% |
焼肉店 | 38〜42% | 18〜22% |
寿司店 | 38〜42% | 23〜27% |
居酒屋 | 28〜35% | 25〜32% |
弁当(テイクアウト) | 38〜42% | 18〜22% |
出典:CLOCK KITCHEN
弁当などテイクアウト専門店や焼肉店は人件費が低い一方で、レストランやカフェは人件費が高くなることが分かります。
FLコストを下げる4つの方法
FLコストが高すぎる場合は、見直しを測ればお店の経営状況を改善できるでしょう。
- 汎用性の高い食材を選ぶ
- 調理方法を工夫する
- 適正な量を仕入れる
- 仕入先を見直す
ここから、FLコストを下げる方法を具体的に解説します。
①汎用性の高い食材を選ぶ
FLコストを下げる方法として、汎用性の高い食材を選ぶことで食材費を下げる点があげられます。
特定のメニューでしか使わない食材が多い場合、食材のロスが増えやすくなるためです。
低価格で汎用性の高い食材は、具体的に下記の通りです。
- じゃがいも
- 豆腐
- 卵
- 鶏肉
- 人参
- 豆苗など
業態によって食材が変わりますが、なるべく汎用性の高い食材を使うようにすると効果的になります。
②調理方法を工夫する
FLコストを下げる方法は、調理方法を工夫する点です。
パン屋の場合、食パンの耳を捨てているケースもありますが、揚げて販売したりそのまま販売できたりもします。
居酒屋の場合、魚のアラを捨てずに、アラ煮として安く提供することもできるでしょう。
調理方法を工夫すれば、今まで捨てられていた食材でも、新たに利益を生み出す可能性があります。
捨てている食材を再利用できないか考えることで、新メニューのアイディアが生まれる可能性もあります。
③適正な量を仕入れる
FLコストを下げる方法は、適正な量の食材を仕入れる点です。
売り切れにならないように、多めに食材を仕入れているお店もあるでしょうが、廃棄する食材も多くなる可能性があります。
食材を多く仕入れると、保管するためのスペースも必要になるでしょう。
売上の予測を立てたうえで、適正な仕入れの量を見極めるようにすると効果的です。
④仕入先を見直す
FLコストを下げる方法として、仕入先を見直す方法があげられます。
フランチャイズに加盟しているなどの理由で仕入先が決められている場合を除き、すぐにできる点がメリットです。
食材を安く仕入れる方法は、具体的に下記の通りです。
- 業務用のスーパーを利用して購入する
- 直接農家と契約する
契約先を選定するために手間がかかりますが、一度決めれば長期間に渡って効果を得られるでしょう。
飲食店の人件費率を管理するために有効な指標
飲食店の人件費率を管理するためにはFLコストを把握するのがポイントですが、他に有効な指標が主に6つあります。
- 営業利益率
- 人事売上高
- 労働生産性
- 時間帯売上
- 労働分配率
- 平均時給
ここから、人件費率を管理するために有効な指標を具体的に解説します。
営業利益率
営業利益率とは、売上高に対する営業利益の割合のことです。
営業利益とは、売上から家賃や光熱費などの経費を引いて残った金額のことで、お店の売上を確認する場合に効果的な指標です。
人事売上高
人事売上高とは、1時間あたりにスタッフが、どれだけの売上を出しているのかを表す指標を表します。
「1日の売上高÷全スタッフの労働時間」によって求められる点が特徴で、生産性を表す指標として活用できます。
人事売上高が5000円以下になる場合、一般的にスタッフが多すぎると言われていますが、高ければいいというものでもありません。
お客さんに満足の行くサービスを提供できているかが本質になると言えるでしょう。
労働生産性
労働生産性とは、スタッフ1人あたりの生産性を測るための指標です。
「粗利(売上−食材原価)÷全スタッフ」で求められ、50万円以上であることが目安です。
労働生産性が低い場合、長時間働いても利益を出せず、スタッフのストレスや疲労などに繋がる恐れがあります。
スタッフを教育して生産性を向上させたり、オペレーションを改善したりすることが求められます。
時間帯売上
時間帯売上とは、営業時間を区切った場合に時間帯別の売上を表す指標のことで、一般的に1時間単位で管理されるのが特徴です。
時間帯売上を把握すれば、スタッフのシフト調整をしやすくなります。
労働分配率
労働分配率とは、粗利の中で人件費が占める割合を表す指標のことで、「人件費÷粗利×100」で計算できます。
目安は40%以下で、労働分配率が低い場合はお店に利益が出やすく、高い場合はスタッフの満足度が高くなりやすい点が特徴です。
平均時給
平均時給とは、社員やアルバイトを含めた全スタッフの1時間あたりの時給のことです。
「総人件費÷全スタッフの労働時間の合計」で求められ、地域にもよりますが1200円以下が目安になります。
マイナビが行った調査によると、2023年2月のアルバイト・パートの全国平均時給は1,177円になることが判明しました。
飲食店の人件費率を下げる4つの方法
飲食店の人件費率の割合が高すぎる場合、下げることでお店の利益を上げる効果が期待できます。
- データに基づいてシフトを作る
- 柔軟にシフトを変更する
- マニュアルを作成する
- オペレーションを改善する
- システムを導入する
ここから、人件費率を下げる方法について具体的に解説します。
①データに基づいてシフトを作る
飲食店の人件費率を下げる方法は、労働生産性や時間帯売上などのデータに基づいてシフトを作る点です。
適切な人員配置ができれば、スタッフの手が余ったり現場が混乱したりする状況を回避しやすくなるためです。
売上が少ない時間帯や曜日の場合、スタッフのシフトを最小限にすることで、人件費をムダにすることがなくなるでしょう。
お客さんの少ない曜日はお店の店休日に設定したり、営業時間を短縮したりするなどの対策を取るのも1つの方法です。
②柔軟にシフトを変更する
飲食店の人件費率を下げる方法として、柔軟にシフトを変更する点があげられます。
宴会など大口の予約のキャンセルによって、予定が大きく変わるケースがあるためです。
朝礼などを活用して、早あがりできるスタッフを把握しておけばスムーズに対応できるでしょう。
学生のスタッフはシフト変更に応じやすく、主婦は応じにくい傾向にあります。
③マニュアルを作成する
飲食店の人件費率を下げる方法は、お店独自のマニュアルを作成することです。
新しいスタッフが入った場合や後輩に新しい仕事を教える場合、基本的に先輩のスタッフは時間を割いて教える必要があります。
自分のやるべき仕事を後回しにして対応する必要があり、残業代が発生すると人件費率が上がる原因の1つになります。
マニュアルを作るのは大変かもしれませんが、一度作れば長く使える点がメリットです。
④オペレーションを改善する
飲食店の人件費率を下げる方法として、オペレーションの改善によって仕事を効率化する点があげられます。
オペレーションの改善方法は、具体的に下記の通りです。
- 水やドリンクをセルフサービスにする
- 整理整頓を徹底し、探し物をする時間をなくす
- 調理の手順を見直すなど
調理や接客の面で小さな改善を積み上げれば、結果として数時間浮かせられる可能性があります。
気づいた点や改善点をシェアし合える環境を作るのが重要になるでしょう。
システムを導入する
飲食店の人件費率を下げる方法として、食券機やタブレットなどのシステムを導入する方法があげられます。
食券機を導入すれば、会計の手間や時間を省略したり、会計のミスを防いだりする効果が期待できます。
注文にタブレットを導入することで、注文を間違ったり混雑時にも対応しやすくなったりする点がメリットです。
システムの導入には費用がかかり短期的に見ると損ですが、長期的に見れば得になるでしょう。
飲食店におすすめのPOSレジ比較13選|選ぶポイント・メリット・デメリットも徹底解説飲食店の人件費率を下げるリスク3つ
飲食店の経営を安定させるためには人件費率を下げるのが一つの方法ですが、いい点ばかりではありません。
- 客離れが起こる
- スタッフ1人当たりの負担が増える
- 採用コスト増加
ここから、人件費率を下げるリスクについて具体的に解説します。
①客離れが起こる
飲食店の人件費率を下げるリスクとして、客離れが起こる可能性がある点があげられます。
スタッフの人数が減ると下記のように、お客さん1人ひとりに対して十分なサービスを提供しにくくなるためです。
- すぐに注文を取りにいけない
- 応対が雑になる
- 新人教育ができない
- 最適なタイミングで料理を提供できない
顧客を対象としたアンケートの結果でも、以下の点が判明しています。
- 「味が美味しくても不快な接客ならもう行かない」:82%
- 「味が普通でも、接客態度が良ければその後も通う」:67%
出典:The企業&飲食経営
利益を残そうとした結果、逆に利益が減る可能性があると言えます。
②スタッフ1人当たりの負担が増える
飲食店の人件費率を下げるリスクとして、スタッフ1人あたりの負担が増える点があげられます。
人数が減ればその分だけ忙しくなり、スタッフの気持の余裕がなくなってくる可能性があります。
モチベーションが低下したり辞めることに繋がったりするケースがあるでしょう。
スタッフの手が空く状況はなるべく避けるべきですが、人手不足で常に忙し過ぎる状況もよくありません。
お店を長く安定して経営していくためには、適切な人員配置がポイントだと言えます。
③採用コスト増加
飲食店の人件費率を下げるリスクは、採用コストが上がりやすくなる点です。
人件費率を下げることで、給料が少ないことを理由に辞めるスタッフが出てくる可能性があるためです。
新しいスタッフを雇うために求人媒体を使って広告を出す場合、費用が発生します。
また、新しいスタッフが入ってきても、1人前に仕事ができるようになるまでには数カ月間かかるのが一般的です。
スタッフが定着しない場合、人件費が余計に必要になる恐れがあると言えます。
繁盛店の中には、業務を効率化して最小限の人数で運営することで、競合店と比べて高い給料を支払っているケースもあります。
スタッフの満足度が上がれば離職を防げ、店の経営を安定しやすくなるでしょう。
飲食店の人件費率は下げすぎないように注意しよう
ここまで、飲食店の人件費率の目安や下げる方法、リスクなどについて解説してきました。
本記事のまとめは、具体的に下記のとおりです。
- 人件費とは、スタッフの労働に対して支払われる費用のこと
- 人件費率を管理するためには、FLコストを把握するのがポイント
- 人件費率を下げる方法は、オペレーションの改善やシステムの導入などがある
- 人件費率を下げるリスクは、客離れやスタッフの負担増加による離職の恐れなどがある
本記事を参考に、飲食店の人件費率について理解していただければ幸いです。