「飲食店のインバウンド対策って何?」
「飲食店にインバウンド対策がなぜ必要なのかわからない…」
「飲食店でインバウンド対策するための具体的な方法が知りたい」
本記事では上記の疑問やお悩みなどにお応えします。
アフターコロナの影響で外国人旅行客が増えると、どのような対応をするのかによって飲食店の売上も左右されます。
これから開業を考えている方の中には、そもそもインバウンドとは何なのかがわからない方や、対策方法などがわからない方もいるでしょう。
そこでここから、インバウンド対策の特徴やメリットとデメリット、対策方法を具体的に解説します。
最後まで読めばインバウンド対策について理解でき、開業するときに不安に思うことはなくなるでしょう。
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飲食店のインバウンド対策とは
インバウンド対策とは、外国から来る観光客やビジネスパーソンなどを増やすための施策のことで「入ってくる」という意味を持ちます。
飲食店に対して使われるインバウンド対策とは、言語や文化などの異なる外国人のお客さんがお店を利用しやすいように対策することをいいます。
飲食店でのインバウンド対策とは、具体的に下記の通りです。
- 多言語に対応したメニューや看板の表記
- 無料のWi-Fiを設置する
- キャッシュレス決済を導入する
- 日本の伝統や文化を体験できる独自のサービスを提供する
観光庁が実施した調査により、以下のように日本を訪れる外国人は、日本食を食べることに最も大きな期待を持っていることがわかっています。
1位:日本食を食べること(68.3%)
2位:ショッピング(53.4%)
3位:自然・景勝地観光:45.4%
「次回日本に来たときは何をしたいか」についても調査されており、日本食を食べることに対して最も高いニーズがあると判明しました。
1位:日本食を食べること:55.4%
2位:ショッピング:43.2%
3位:自然・景勝地観光:42.9%
出典:観光庁
日本食に対して高い関心を持っている外国人は多く、飲食店では適切なインバウンド対策が求められるといえるでしょう。
飲食店のインバウンド対策の重要性3つ
飲食店が売上をあげやすくするためには、下記の理由から今後ますますインバウンド対策が重要になってきます。
- インバウンド客の回復が見込まれている
- 競合店と差別化を図りやすくなる
- 人口減少で日本人に対する集客が難しくなる
ここから、飲食店のインバウンド対策の重要性について具体的に解説します。
①インバウンド客の回復が見込まれている
まず、飲食店でインバウンド対策が重要になるのは、アフターコロナの影響で、インバウンド客の回復が見込まれているためです。
2022年9月に、日本への1日あたりの入国者数は5万人にまで引きあげられています。
10月からは、パッケージツアーに限られるものの個人旅行が解禁され、大都市の空港で国際線の就航数も増える傾向にあります。
株式会社エビソルが飲食店に実施したアンケートでも、約6割(57.7%)の飲食店は、外国人旅行客の増加を実感していることが判明しました。
②競合店と差別化を図りやすくなる
次に、飲食店のインバウンド対策の重要性として、早く実施すれば競合店と差別化を図りやすくなる点があげられます。
インバウンド対策としては、多言語対応やキャッシュレス決済の導入などがあげられ、基本的に時間やお金などがかかる傾向にあるためです。
飲食店におすすめのPOSレジ比較13選|選ぶポイント・メリット・デメリットも徹底解説前述の株式会社エビソルが実施したアンケートにより、過半数に達する飲食店では、以下のように具体的な対策を打てていない点が判明しています。
- 外国人旅行客の集客に課題を感じていると回答した飲食店の割合:70.4%
- 課題に対して、対策を打てていないと回答した飲食店の割合:58%
お店を営業しながらインバウンド対策をするのは、難しいケースが多いといえるでしょう。
開業する前からインバウンド対策をしておけば、競合店と比較して優位に立てる可能性があります。
③人口減少で日本人に対する集客が難しくなる
加えて、飲食店のインバウンド対策が重要になるのは、日本では今後、人口減少が加速すると予測されているためです。
国立社会保障・人口問題研究所の将来推計によると、日本の総人口は以下のように推移すると見込まれています。
- 2030年:1億1,662万人
- 2060年:8,674万人(2010年と比較して32.3%減)
年を経るごとに日本人の人口が減っていけば、ターゲットとなるお客さんの層が減り、集客も難しくなると予想されます。
今まで通り日本人のみをターゲットとする飲食店の場合、安定した経営を続けることが難しくなる可能性もあります。
開業するときのターゲットとして、外国人旅行客を視野に入れるのもポイントになるでしょう。
飲食店のインバウンド対策のメリット3つ
飲食店でインバウンド対策をすれば、下記のようにさまざまなメリットがあります。
- 客単価が高くなりやすい
- 団体で来店してもらえる可能性が高い
- 世界に向けてアピールできる
ここから、インバウンド対策のメリットについて具体的に解説します。
①客単価が高くなりやすい
まず、インバウンド対策のメリットとして、客単価の高くなりやすい点があげられます。
円安の影響で気軽にものやサービスを購入しやすい点と、富裕層が多く観光に来る傾向にあるためです。
コロナ以前の2012年から2019年までは、8年連続でインバウンドの旅行消費額が上がっていることからも、外国人は多くのお金を使う可能性が高いといえます。
観光庁の調査によると、インバウンドの旅行客1人あたりの飲食代平均は、約3万5,000円だとわかっています。
お酒を飲む量が日本人よりも多い傾向にあり、特にお酒を提供している飲食店では、客単価の高くなりやすい点が特徴です。
日本酒のことを英語では「Sake」といわれるように、日本の食文化は世界にも広まりつつあります。
②団体で来店してもらえる可能性が高い
次に、インバウンド対策のメリットは、外国人旅行客の場合、複数人で来店してもらえる可能性が高い点です。
観光庁の実施した訪日外国人消費動向調査によって、外国人観光客の同行者の人数は以下のように判明しています。
- 家族・親族:30.3%
- 自分1人:22.1%
- 友人:20.2%
出典:観光庁
1人で旅行に来る方もいますが、約2割程度であり少数派です。
複数人の旅行客を呼び込めれば、売上を効率的にあげやすくなるでしょう。
③世界に向けてアピールできる
最後に、インバウンド対策のメリットは、外国人旅行客にSNSへ投稿してもらえれば、世界に向けてお店をアピールできる点です。
外国人が飲食店を選ぶときも、日本人と同じように口コミサイトやSNSなどの情報を参考にする傾向にあるためです。
不特定多数の人に見られる口コミは、1つの投稿を通して大きな話題になるケースもあります。
SNSに投稿してもらうことで、費用や労力をかけずに効果的な宣伝ができるといえるでしょう。
SNSに投稿してもらいやすいように、インパクトのあるメニューを作ったり、日本らしい文化を取り入れたりするのも1つの方法です。
飲食店のインバウンド対策のデメリット2つ
インバウンド対策をすればお店にとってメリットがありますが、下記のデメリットもあります。
- 時間や費用がかかる
- リピーターを減らす恐れがある
ここから、インバウンド対策のデメリットを具体的に解説します。
①時間や費用がかかる
まず、インバウンド対策のデメリットは、実施するためには時間や費用がかかりやすい点です。
前述の通り、インバウンド対策として、Wi-Fiの設置やキャッシュレス決済の導入などがあげられますが、基本的に費用が発生します。
これから開業する方の中には、少しでも費用を押さえたうえで始めたいという方もいるでしょう。
資金面で余裕がない方の場合、インバウンド対策を導入するリスクが大きくなるといえます。
②リピーターを減らす恐れがある
加えて、インバウンド対策のデメリットは、リピーターのお客さんに影響を与える恐れがある点です。
前述の通り、インバウンドのお客さんは複数人で来店する可能性が高く、場合によっては満席になるケースも考えられるためです。
短期的に見るとお店にとって利益になると考えられますが、長期的に見るとリピーターを減らす原因になりえるでしょう。
リピーターのお客さんは口コミで評判を広げてくれたり、新規のお客さんを連れてきてくれたりとお店にとって重要な存在です。
インバウンドの旅行客に対応しつつ、いかにリピーターを減らさないようにできるかが求められます。
飲食店のインバウンド対策方法9つ
インバウンド対策を実施するうえで、ポイントとなる点が9点あります。
複数のインバウンド対策を組み合わせることによって、相乗効果が期待できるでしょう。
ここから、インバウンド対策の方法について具体的に解説します。
①SNSを活用する
飲食店でインバウンド対策をする場合、InstagramやTwitterなどのSNSを活用するのがポイントです。
観光庁の「訪日外国人の消費動向調査」によると、外国人旅行客が日本に来る前に、情報源として活用した項目で2位(23.7%)になっているためです。
なお、1位は個人ブログの30.6%だと判明しています。
特に、飲食店と相性の良いSNSは、料理の写真や店内の様子を見てもらいやすいInstagramです。
飲食店の集客にSNSを活用すべき5つの理由!成功するポイントも詳しく解説きれいな写真を通して、お店に興味を持ってもらえる可能性が高く、写真のとり方や料理の盛り付け方などに工夫が必要になります。
Instagramを使ったインバウンド対策のポイントは、具体的に以下の点です。
- プロフィールは英語でも表記する
- 投稿にお店の位置情報を登録する
- 地名や料理名など、英語でハッシュタグをつける
外国人旅行客に届きやすいように、ところどころで英語を使うのがポイントです。
②旅行メディアに登録する
飲食店でインバウンド対策をする場合、世界でも使われている旅行メディアに登録しましょう。
世界中の人に対して、お店を効果的にアピールしやすくなるためです。
地域にもよりますが、とくに多くの外国人から利用されているメディアは以下の2つです。
トリップアドバイザーとは、世界最大級の閲覧数がある旅行の口コミ・価格比較を主とするメディアです。
アメリカに本社があり、世界48カ国・28言語に対応しているのが特徴で、世界中の人にお店をアピールできます。
登録から掲載まで無料で、登録しておくのも1つの方法です。
大衆点評とは中国最大の口コミサイトで、地域ごとにお店のランキングを調べられる点が特徴になります。
中国人観光客の45%が利用しているといわれており、中国人をターゲットとするお店の場合は登録するのが望ましいです。
③口コミを書いてもらいやすくする
飲食店でインバウンド対策をする場合、外国人旅行客に口コミを書いてもらいやすいように、施策を考えるのがポイントになります。
実際にお店を利用した人の声は、広告よりも効果的になるためです。
口コミを書いてもらいやすくするための方法は、具体的に下記の通りです。
- 口コミを投稿した方限定でサービスを提供する
- SNSアカウントがあることをアピールする
- 写真撮影できることを掲示する
- 写真映えする場所やメニューを作る
- 笑顔や気遣いなど、温かいおもてなしを提供する
口コミを書いてもらうための施策を考えるのも重要ですが、どうすればお店で心地よく過ごしてもらえるのかを考えるのもポイントになります。
接客やサービスに感動してもらえれば、口コミ投稿してもらえる可能性はあがるでしょう。
④無料のWi-Fiを設置する
飲食店でインバウンド対策するには、無料のWi-Fiを設置しましょう。
環境庁の調査により、旅行中に困ったこととして「無料公衆無線LAN環境」が2位(21.2%)だと判明しているためです。
一般的に外国人旅行客は、ポケットWi-FiやSIMを購入したりレンタルしたりしていますが、高額になりやすいのが特徴です。
無料でWi-Fiを利用できるようにすれば、外国人旅行客から選ばれやすくなるでしょう。
ただし、Wi-Fiの導入には初期費用や月額費用などが発生するケースもあり、慎重に検討するのがポイントです。
⑤外国語のメニューを作る
飲食店でインバウンド対策するには、外国語に対応するメニューを作りましょう。
観光庁の調査によって、飲食店のコミュニケーションの中で「料理を運ぶ・注文する際」に、外国人旅行客は最も困っていることが判明したためです。
アレルギーや宗教的な理由から、食べものを制限される方もいるのが特徴です。
メニューに写真を載せたり、使われている食材を画像で記載したりすることでも、安心して料理を選んでもらえるようになるでしょう。
メニュー表に対応されるのが望ましい外国語は、具体的に以下の通りです。
- 英語
- 中国語
- 韓国語
- ヨーロッパの言語
特に、英語や中国語は使われる可能性が高く、メニュー表に記載できるのが理想です。
⑥キャッシュレス決済を導入する
飲食店でインバウンド対策する方法として、キャッシュレス決済の導入があげられます。
現金のみの対応の場合、現金の持ち合わせがない外国人旅行客に来てもらえなくなるためです。
キャッシュレス決済を導入することで費用は発生しますが、会計のミスを減らしたりレジ締めの時間を短縮したりする効果が期待できます。
国や地域によって使われているクレジットカードなどが異なり、なるべく多くの支払い方法に対応しているものが望ましいです。
キャッシュレス決済に対応していることをアピールすることで、外国人旅行客に選ばれやすくなるでしょう。
⑦モバイルオーダーシステムを導入する
飲食店でのインバウンド対策として、モバイルオーダーシステムの導入があげられます。
中国やアメリカなどでは日本よりも普及しており、一般的になりつつあるためです。
多言語に対応しているものを選べば、外国人旅行客の方も迷わずに注文しやすくなるでしょう。
モバイルオーダーシステムを導入することで、オーダーを聞きに行く手間がなくなるのもメリットです。
人件費をなるべくかけずにお店を開業したいと考える方にとって、導入を検討する余地はあります。
⑧独自のメニューを作る
飲食店でのインバウンド対策として、お店独自のメニューやサービスを考える点があげられます。
特に外国人旅行客に喜ばれやすいのは、忍者や侍、アニメなどの日本独自の文化です。
飲食店によっては、忍者の格好をして接客する事例もあります。
京都の「ザ・洋食屋・キチキチ」では、店主がオムライスを作るパフォーマンスが話題となり、世界中から旅行客が来店しています。
ハイテンションの店主が繰り出す鮮やかな手さばきとアナウンス、食べた人を感動させる味は、他の店では体験できないものです。
たとえ目新しいものではないとしても、切り口や見せ方を変えることで外国人旅行客を感動させられるよい例です。
⑨多言語翻訳ツールを導入する
飲食店でのインバウンド対策として、多言語翻訳ツールの導入があげられます。
導入には費用がかかりますが、複数の言語に対応しているものを導入することで、外国人旅行客をより丁寧におもてなしできる点が特徴です。
たとえば「ポケトーク」の場合、ボタンを押して話しかけるだけで、相手の言語に合わせた翻訳結果を音声で返せます。
世界の73の言語は音声とテキスト変換に対応しており、11の言語はテキスト変換に対応しています。
カメラで撮影することで、メニュー表などの文字を翻訳することも可能です。
メニュー表が外国語に非対応の場合や、通訳できるスタッフがいない場合でも、適切に対応できるでしょう。
飲食店のインバウンド対策の成功事例
インバウンド対策の成功事例として、東京・神奈川・埼玉に展開するしゃぶしゃぶ・すき焼き専門店「鍋ぞう」があげられます。
とくに渋谷センター街店は、2020年にトリップアドバイザーの「旅好きが選ぶ!外国人に人気の日本のレストラン」で1位に選ばれるなど、人気を集めています。
鍋ぞうが外国人旅行客から人気を集められた理由は、具体的に以下の点です。
- スタッフが写真撮影のサポートをする
- フリーWi-Fiを設置している
- メディアに投稿された口コミに対して丁寧に返信している
- 外国語を話せるスタッフを採用している
- Webサイトを多言語に対応している
インバウンド対策を複数掛け合わせたことによって外国人旅行客に喜ばれ「鍋ぞう」はメディアのランキング1位を獲得できたといえるでしょう。
飲食店を開業するときはなるべく多くのインバウンド対策を実施しましょう
ここまで、インバウンド対策の特徴やメリットとデメリット、対策方法について具体的に解説してきました。
本記事のまとめは下記の通りです。
- 外国人観光客が飲食店を利用しやすいように対策するのがインバウンド対策
- インバウンド客の回復が見込まれていて、差別化を図りやすいので重要
- 客単価が高くなりやすく、団体で来店してもらいやすいのがメリット
- 時間や費用のかかりやすく、リピーターを減らす恐れがあるのがデメリット
- SNSの活用や旅行メディアへの登録で活用するとよい
本記事を参考に、飲食店のインバウンド対策について理解していただければ幸いです。