飲食店の経営は非常に難しいと言われています。
実際、1年で30%、2年で50%、3年で70%、5年で80%以上のお店が廃業するというデータもあり、飲食店経営は簡単ではないことが伺えます。
参入障壁が低い飲食店ですが、新規参入する場合は、念入りな検討と準備が必要です。
具体的にはどのような要因があるのか知りたいと思いませんか?
この記事では、飲食店経営が難しい理由を5つにまとめて詳しく解説します。
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①初期投資が高い
飲食店を開業するときに必要な初期費用はかなり高いです。
実際にどのくらいかかるのかというと、日本政策金融公庫の2020年7月の調査によると開業資金の平均は989万円となっています。
また、500万円未満で飲食店を開業した人の全体に占める割合は43.7%で1991年の調査開始以来最も高い割合となっています。
かなり大きな金額だなと思う方が多いと思いますが、この989万円という金額は日本政策金融公庫が調査を開始して以来、最小金額となっていて、年々コストダウンやシンプル化が進んでいると推測することができます。おおよその初期費用の内訳は次の円グラフのようになります。
また、開業して数か月の間赤字が続いてしまうことも多々あります。仮に売り上げが損益分岐点ほどだったとします、飲食店を開業する際に金融機関から融資を受けている場合がほとんどですので、その融資額の元本と利子を毎月払わなければならないとなると、売り上げが損益分岐点ラインだと経営状況は悪化していると言えます。
開業時に大きな資金を借りれば借りるほど、この返済の負担は大きくなるため、事業計画を立てる時に借入金額を熟考する必要があるでしょう。
②競合が多い
飲食店は競合が多いことも特徴の1つです。なぜそうなってしまうのかというと、飲食業界に参入する敷居(ハードル)が低いことが挙げられます。
飲食店を開業すること自体はそう難しくありませんし、読者の方々も何かで起業するとなったときに、自然と飲食店が思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか?それだけ馴染みのある業種なのです。
実際、飲食店を経営する上で難関資格は必要ありません。「食品衛生責任者」と「防火管理者」という2つの資格だけで基本的には経営することができます。この2つの資格は取得するのも簡単で、どちらも数千円の費用、1〜2日の講習を受けるだけで取ることができます。
また、ライバルは他の飲食店だけではありません。宅飲み需要が増えている昨今、おいしいお惣菜を提供しているコンビニやスーパーもライバルとして認識するべきでしょう。
こうした理由もあって飲食店を経営するときに非常に困るのが集客です。
開店当初は物珍しさで来店するお客さんが多いことがありますが、客足はだんだんと減ってしまうケースが大半です。安定してお客さんを確保するためには、競合飲食店との差別化を明確にしたコンセプトを打ち出したり、イベントを行ったり、SNSやWebを活用したりするなど多面的な集客施策が求められます。
▼SNSの有効な活用方法はこちらで解説しています
飲食店がSNSで売上・集客につなげる8つのコツ!成功事例や注意点も紹介2022年に行われたある調査ではSNSを活用した集客を行っているか?と484名にアンケートを取ったところ、約80%が「はい」と回答したという結果が出ています。そしてその過半数はインスタグラムを活用しているとも報告されています。
引用:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000495.000001049.html
③利益率が低い
上述しましたが、飲食業界は競合が多いため価格競争を強いられます。そのため、利益率が自然と低くなってしまいます。
経済産業省によると飲食店の営業利益率の平均は約9%と発表されています。その営業利益率は次の式で求めることができます。
営業利益=売り上げー原価ー販売管理費
原価は主に材料費で、販売管理費は家賃や従業員の給与などです。これらは一般的に経費とも言われたりします。
そして、飲食店は物件を借りて家賃を払っているだけではなく、人件費や光熱費、材料費や広告費など様々なランニングコストが発生します。下記はあくまで目安です。
家賃 | 約10% |
水道光熱費 | 約5~8% |
人件費 | 約25~30% |
材料費 | 約30% |
広告費 | 約3% |
通信費・消耗品費 | 約5% |
飲食店経営をする上ではこの表のようなランニングコストが発生します。この表を見て分かるように、人件費や材料費が大きな割合を占めるのが飲食店経営の特徴です。
在庫ロスによるコスト
特に在庫の管理は難しいです。例外もありますが、飲食店は生鮮食品を調理して料理を提供することが多いです。生鮮食品は賞味期限・消費期限が短いため、在庫管理が難しく、想定よりも客足が伸びないとすぐに廃棄せざるを得ません。
廃棄すると仕入れ費用が無駄になり、逆に予想以上に客足が伸びた場合は在庫不足で売り上げが頭打ちになってしまいます。常に仕入れ・在庫の管理は難しいですし、コロナ禍の今はなおさらでしょう。
賃金や食材の価格上昇
また、昨今では最低賃金が毎年のように上がったり、食材の値上がりも顕著です。元々経費の中で大きなパーセンテージを占める人件費や材料費がシミュレーションよりも徐々に高くなってしまうなんてことは、今後も必ず起こるでしょう。
利益率を上げるためには人件費の削減や原価率を下げるという対策を講じますが、店員の数が足りなくて店が回らなかったり、お客さんにコスパが悪いと判断されお店の評判が下がったりなど表裏一体の対策でもあります。
食材ロスを減らす、売り上げが上がる施策を考えるなどから始めるのが無難な対策でしょう。
④長時間労働と低賃金で人手不足
飲食店経営が難しい理由として「長時間労働と低賃金で人手不足」も挙げられます。価格競争で勝つために、人件費を削減しようとすればなおさらです。なぜ人手不足に陥ってしまうのか、理由は3つあります。
仕込み・昼営業・夜営業
飲食業界では基本的に、「仕込み・昼営業・夜営業」この3つの繰り返しです。必然的に長時間労働になってしまいます。お店に立つ時間が短いとは決して言えません。
仕込みの時間も決して短いとは言えませんし、しっかり仕込みをしたとして、営業中にお客さんが来ない暇な時間は必ず来るでしょう。
例えば、一般企業では1日8時間労働が基本であるため、9時から18時(休憩1時間含む)といった勤務時間が一般的です。
しかし、飲食店の場合、9時から18時までが営業時間だとしたら、その前に料理の仕込み、営業終了後に片付けや売上管理などのさまざまな業務が生じます。
また、飲食業界では営業時間を減らすことは顧客獲得の機会損失と考える傾向があり、顧客サービス拡充という考えの下、自然と長時間営業となってしまうのです。また、
・薄利多売である
・自動化、機械化が難しい
といった要因も長時間労働になる原因です。
営業時間中の労働時間が普通だったとしても、開店準備・閉店後の締め作業を合わせると労働時間は必然的に長くなり、人が定着しない要因となります。
給与水準が低い
飲食店の労働環境で問題視されているものの1つに給与水準が低い、ということも挙げられます。
厚生労働省の令和3年度賃金構造基本統計調査によると、飲食店店員の平均年収は、39.5歳で317万円ほどとなっています。
計算しやすいように平均年収が300万円と仮定すると、月収は約25万円、実際の手取りは20万円と考えられます。
最大手の「すかいらーくホールディングス」でさえ初任給は約22万円で平均年収は660万円ほどです。
この数字を見て「あまり低くないじゃん」と思われる方もいるかもしれません。しかし、飲食業界で一番認知があり確固たる地位を築いている企業ということを踏まえると、さしずめ高いとは言えないのではないでしょうか?
休日が少ない
飲食店の労働環境で問題視されているものの1つに休日が少ない、ということも挙げられます。
週休1日というケースや土日祝日・年末年始に休みが取れない、連休が取れないといったことがあります。
もちろん、冠婚葬祭など必要に応じて申し出をすれば土日祝日などに休むことは不可能ではありません。しかし、基本、繁忙期にあたる時期に休みをとるのは簡単ではなく肩身が狭いものです。
飲食店は慢性的な人手不足です。綺麗にシフトを組めるほど人的余裕がある店舗は少ないのが現状です。言い換えると「人手不足だから休日がすくない」「休日が少ないから人手不足」状態なのです。
また、土日祝日は普通の社会人にとっては休日ですが、一方飲食店にとっては売り上げをあげられるチャンス日です。そのため、イベントごとは休日に多いですが、周りの友人などと予定を合わせて遊ぼうと計画を立てようにも立てられません。
⑤売り上げが安定しない
最後に述べる飲食店経営が難しい理由は「売り上げが安定しない」からです。その理由は主に2つあります。
外的要因で売り上げが変動する
一定以上の売り上げを確保するために、オーナーは日々努力をするわけですが、飲食店は外的要因の影響を受けやすい業種であることが経営を難しくします。
外的要因の代表は天候です。
台風や大雪はもちろんそうですが、にわか雨の場合や気温が直近よりも少し低いというだけで客足が激減してしまうことが多々あります。
また、流行にも左右されやすいという特徴もあります。最近の具体例だとタピオカミルクティーです。2,3年で爆発的に店舗が増え、いたるところにタピオカのお店ができましたが、今では任期は落ち着き、残っている店舗のほうが少ないのではないでしょうか。
売り上げの天井が決まっている
「売り上げの天井が決まっている」ということに関しては、これは売り上げが高まってきてからの悩みなので、今まで解説してきた難しさとは少しベクトルが異なりますが、飲食店経営のデメリットです。
店舗型の飲食店ではあらかじめ席数が決まっているため、売上の天井が決まっています。なぜなら、飲食店舗はキャパシティが予め決まっているからです。
例えば、行列の絶えないラーメン屋があったとします。そしてそのラーメン屋は、
営業時間 | 11:00~21:00 |
席数 | 10席 |
客単価 | 900円 |
回転数 | 3回/時間 |
このような状況の場合、常にお客さんが入り続けていたとしても、
10時間×10席×900円×3回転=27万円
1日の売り上げは27万円が限界ですし、休みなしで30日営業したとして
27万円×30日=810万円が天井です。
「810万円も売り上げが上がって良いじゃないか」と思う人もいるかもしれません。しかし、これは上振れてお店が最上級に調子が良い状態になってはじめて達成できる数字ですし、基本的には夢物語です。
いつ売り上げが上がらなくなるかわからないリスクを背負って飲食店を経営するのですから、稼げるときに稼いでおきたいですよね。そう考えると、売り上げの天井がある程度決まっているのは少々デメリットと言えます。
飲食店経営は実際非常に難しいので入念に準備をしましょう!
今回は飲食店経営が難しい理由を5つに分けて解説しました。
解説してきたとおり、飲食店経営はたくさんの難しさがありますよね。知らなかったことも多かったのではないでしょうか?飲食店を経営しようと検討している人、経営してるひとの手助けとなれたら幸いです。